口唇圧測定器(その3 口唇圧計測の意義)

  今回は口唇圧を計測する意義について述べる。その前に、口唇圧について触れることにする。口唇圧とは、上唇と下唇を閉鎖する時の圧力のことである。口唇の閉鎖は、食べ物の取り込みから嚥下に至る一連の摂食嚥下過程において大変重要な機能である。ここで摂食とは食べ物を見てから、咀嚼(そしゃく)して、嚥下する一連の動きで、嚥下とは、食べ物を飲み込むことで、口腔内の食物塊を胃に送り込む運動を表す。口唇閉鎖力は、垂直性および水平性の圧力がかかることによってなされる圧力で測定することができる。今回開発した測定器は、普段行っている食べ物の取り込み(捕食)による垂直的口唇圧を測定するものである。口唇を閉鎖する圧(口唇圧)は、咀嚼(かむこと)や発声に重要な役割を担っている。人間は口唇を閉鎖すること(口を閉じること)で、食事を口腔内に取り込むことができ、咀嚼、嚥下(飲み込む)ができる。近年、日本人の死亡原因の第3位は肺炎であり、肺炎の中でも誤嚥性肺炎による高齢者の死亡率は9割を超えている。口唇圧の低下した高齢者は、口呼吸になりやすく、また、咀嚼力も低下するため誤嚥性肺炎に罹患しやすい。よって口唇圧を主観的・定性的な評価ではなく、科学的な立場から客観的に評価する口唇圧測定器の開発の必要性が広く求められている。口唇圧測定器が開発されれば、口唇圧の評価が定量化できることで、安全で適切な食形態の介護食の提供が可能となる。さらに誤嚥性肺炎の予防の観点から、開発された口唇圧計測機器を使用し、口唇圧を向上させる訓練が可能となると考えられる。

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